2018年5月 増光をとらえた変光星

5月は倉敷に帰省したりで確実な撮影はできなかったが8日ほど銀河散策ができた。
本格的に180mmでの撮影に移行した。ただ、135mmのメリットもあるのでケースバイ
ケースで使っていこうと考えている。
新星関連の発見では、小嶋さんによるワイ新星の発見が注目され、多くの観測者から
報告があり、新星よりも貴重な発見とされている。個人的には位置がサーベイ領域外で
あるので撮影できていない。また、発見後の撮影もない。
その他、1437年に発見されたサソリ座新星が14日に12等まで明るくなっているとの情報が
あったので撮影してみたが、透明度も悪く、ちょっと180mmでは難しかった。
位置がわからなかったのでMLで確認したこともあり、VSOLJには一応報告をした。
増光の変光星では、V407Cygが明るく写っていたので驚いたが、確認するとすぐそばに
星があって、重光度になっているようなので、VSOLJの報告からは削除した。

【TOCPより】
TCP J16540110-2515100   2018 05 10.6793*  16 54 01.10 -25 15 10.0  11.7 U     Oph      
同夜撮影していたので新天体ではないと思ったが、以下の新登録の変光星だったようだ。
 Mira variable ASASSN-V J165400.90-251511.4 (period 234 d;)
TCP J14111820+4812559   2018 05 19.5144*  14 11 18.20 +48 12 55.9  12.4 U     Boo
発見報告、VSOLJニュースは以下。
Discovered by T. Kojima, Gunma-ken, Japan, who found this on three frames taken by Canon
 EOS 6D + 200-mm f3.2 lens and confirmed this (mag.= 12.7) on an image,
2018 May 19.599 UT again.
Nothing is visible at this location on a frame taken on 2018 May 14.494 UT (limit mag.= 13).
There is a faint star of SDSS J141118.31+481257.6.
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                            VSOLJニュース(349)
    小嶋さん、ヘリウム激変星が起こした待望の矮新星アウトバーストを発見
                                                              著者:磯貝桂介(京都大学)
                                                              連絡先:
isogai@kusastro.kyoto-u.ac.jp
 待ち焦がれる時間は、いつだって長く感じるものです。待ち遠しいものは世の中に色々とありますが、天体現象もそんなもののひとつではないでしょうか。いつか矮新星アウトバーストを起こすかもしれないと思われながら早13年、ついに増光している姿が発見されました。
 激変星とは、白色矮星を主星にもつ近接連星系のことで、連星の軌道周期(公転周期)は数時間程度です。伴星はロッシュローブを満たしているため、伴星から主星へとガスが流れ混んでいきます。すると、主星の周りには降着円盤と呼ばれるガス円盤が形成されます。この円盤が突発的に増光する現象を、矮新星アウトバーストと呼びます。
 通常、激変星の伴星は低温の星(晩期型の主系列星など)ですが、中には変わった伴星を持つ天体もあります。その1つがヘリウム激変星(りょうけん座AM型星)です。伴星表面の水素は様々な理由からはがれ落ちており、伴星はヘリウムが豊富な高密度天体となっています。一部のヘリウム激変星は進化の末、最終的にIa型超新星や、その亜種「.Ia型超新星」になると考えられていることから、天文学における最重要天体の1つです。しかし、近年まで発見数が少なかったため、観測的な研究はあまり進んでいません。
 ヘリウム激変星の大きな特徴の1つが、極端に短い軌道周期(公転周期)です。
軌道周期が2時間未満の激変星は、重力波放射によって角運動量を失うので、次第に連星間距離が縮み、軌道周期は短くなっていきます。しかし、伴星から主星へとガスが流れこむと、角運動量保存則により逆に軌道周期は長くなります。
基本的に、この2つの効果によって軌道周期は変化していきます。その結果として、通常の激変星の軌道周期は、最も短い天体でも80分程度です。しかし、ヘリウム激変星は伴星が高密度であるために重力波放射の効果が強く、通常の激変星よりも短い軌道周期をとることが可能です。
 そんなヘリウム激変星の中でも最も極端な天体、かに座HM星の軌道周期は、なんとたった5分です。この天体は重力波放射によって少しずつ近づいており、最終的に合体すると考えられています。もしかしたら合体とともに超新星爆発を起こすかもしれません。非常に待ち遠しいですが、遠い未来の話です。
 そのような珍しい連星の仲間 SDSS J141118.31+481257.6 (以降J1411)は、2005年にスローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)によって発見されました。SDSSが撮影したスペクトルから、J1411は水素を失った激変星であること分かりました。軌道周期は46分で、先ほど例にあげた天体に比べると長く感じてしまいますが、通常の激変星の最短周期80分に比べ、非常に短い周期を持っています。
 かくして発見されたJ1411ですが、過去の写真乾板などの資料を漁っても増光現象は見つからず、この特異な激変星が激変するのを、世界の研究者たちは待ち焦がれていました。
 それから13年経った2018年5月19日、群馬県の小嶋正さんは、19.7等だったJ1411が12.4等まで増光しているのを発見しました。これはまさしく、待望の矮新星アウトバーストです。 ただちに国際協力による追観測が行われ、アウトバースト詳細が報告されました。その結果、今回J1411が示したのは、数週間に渡って増光が続く大規模なアウトバースト「WZ Sge型スーパーアウトバースト」であると確認されました。
WZ Sge型スーパーアウトバーストの初期には、早期スーパーハンプと呼ばれる、軌道周期とほぼ同じ周期の微小変動が観測されます。軌道周期が既知のヘリウム激変星で早期スーパーハンプが観測されたのは今回が初めてですが、確かに軌道周期と誤差の範囲で一致しました。
 これから数日で早期スーパーハンプは終わり、続いて通常のスーパーハンプが出現すると予想されます。通常のスーパーハンプの周期変化を詳しく調べることで、わたしたちは連星の質量比を求めることが出来ます。連星質量比は、連星の進化シナリオを研究する上で最も重要な情報の1つです。ヘリウム激変星がどのように生まれ、どのように進化し、どの程度の割合で超新星爆発を起こすか、といった連星進化の研究は、このような観測の積み重ねによってこれから明らかになっていくことでしょう。 これからの研究の進展が非常に楽しみな分野です。
 今回紹介した天体の座標は以下の通りです。
赤経 14時11分18.32秒
赤緯 +48度12分57.5秒 (2000.0年分点)
                                                                                                            2018年5月22日
参考文献
vsnet-alert 22174
CBAT "Transient Object Followup Reports"
Anderson. S. F., et al. (2005), ApJ, 130, 2230
Roelofs. G. H. A., et al. (2007), MNRAS, 382, 1643
Esposito. P., et al. (2014), A&A, 561, 117
Shen. K. J., et al. (2010), ApJ, 715, 767

【増光をとらえた変光星
変光星名〕〔撮影年月日時分〕〔光度x10〕〔観測者〕〔変光範囲 型〕
AQLFV 201805192535 109c Ymo 13.8-<17.0P M
AQLPR 201805192541 123c Ymo 15.2-<17P M:
AQLV635 201805192541 112c Ymo 14.3-<16.4P M: ASAS193645+0918.9 Light Curve
ASASJ182138+0441.7 201805102524 123c Ymo ?
ASASSN-VJ185715.18-103644.9 201805192527 120c Ymo 12.92-3.64V L
ASASSN-VJ194909.68+301320.9 201805192539 121c Ymo 13.13-13.49V L:
CYGGY 201805192554 94c Ymo 10.6-12.5p SRB
CGYGY 201805212432 95c Ymo 10.6-12.5p SRB
CYGGY 201805262449 94c Ymo 10.6-12.5p SRB
CYGHZ 201805042614 112c Ymo 13.0-<15.5p M
CYGHZ 201805042616 113c Ymo 13.0-<15.5p M
CYGHZ 201805102540 107c Ymo 13.0-<15.5p M
CYGHZ 201805142700 107c Ymo 13.0-<15.5p M
CYGHZ 201805192539 101c Ymo 13.0-<15.5p M
CYGV407 201805192551 101c Ymo 7.94-17.0V NR+ZAND+M
DELIZ 201805192549 116c Ymo 12.2-14.0V SRA
NSV11064 201805102529 113c Ymo 13.1-<14.8V M
NSVS5532955 201805102535 121c Ymo 13.65(0.90)R1 EW
NSVSJ1819016+023425 201805192519 113c Ymo 10.582(2.72)R1 M
OGLE-BLG-LPV-204641 201805192522 120c Ymo 12.604(0.326)Ic SR
OPHPT 201805192509 119c Ymo 13.2-15.5V SRA
OPHV444 201805192518 108c Ymo 14.0-<16P M
OPHV665 201805192525 117c Ymo 14.8-<17.0p M
OPHV673 201805102530 122c Ymo 13.8-20.0p M
OPHV673 201805192525 121c Ymo 13.8-20.0p M
OPHV1011 201805102515 125c Ymo 13.1-14.0p RRAB/BL:
OPHV1495 201805192508 122c Ymo 16.6-17.4P SRA
OPHV1870 201805192508 111c Ymo 14.5-17.9P M
PERV392 201804302016 74c Ymo 6.3-16.9V NA+UG
PERV392 201805042013 83c Ymo 6.3-16.9V NA+UG
PUPMU 201805041957 105c Ymo 14.5-<17P M
SCOnova1437 201805142652 <114c Ymo N
SERV610 201805102521 118c Ymo 12.5-<14.7V M
SGRV2530 201805192522 120c Ymo 13.3-14.4V CWA

■1437年のさそり座新星  2018.05.14.26h52m
              写らなかった新星たぶんこのあたりに
イメージ 1

■V407 Cyg    2018.05.19 25h51m
   DSS画像 近接星のがあるようだ。たぶん+赤い星がV407 
イメージ 2
10等台で写る
イメージ 3

                                                              以上