寝床で 80年ぶりの新星爆発を捉える? かんむり座T星

 近々爆発が予測され、世界中の観測者が注目しているのが、かんむり座反復新星 T CrB(かんむり座T)です。昨年3月にこのブログで、「反復新星 T CrB  そろそろ臨戦態勢?」として説明しました。

novaaql1993.hatenablog.com

 それ以後も観測が進み、関連する文献、観測報告*などから、予想される爆発時期は、2024.4年±0.3 とするのが有力になっています。中央値で、今年の4~5月です。これは、先回の増光があった1946年の爆発前のライトカーブや挙動が現在と類似している点や星の色変化から予想されています。
ATel #16404
「Fast and steady re-brightening of the accretion disk of T CrB past the deep minimum of August-September 2023」
ATel #16107
「Recurrent nova T CrB has just started its Pre-eruption Dip in March/April 2023, so the eruption should occur around 2024.4 +- 0.3」


 しかし、今月、2024年1月に爆発と予想する文献もあったりで、いつ爆発するかわかりません。また、この星は先回も書きましたが、t3=6dで、6日で3等暗くなる、減光がとても速い新星です。爆発すれば、あっと言う間に現在の10等から3等前後まで急増光し、一週間もしない間に眼視では確認できない状態になってしまいます。まして、爆発が梅雨時であれば、日本では明るい状況を一度も観測できない可能性すらあります。約80年ごとに肉眼で見える明るさまで爆発するこの新星を是非この目で見たいものです。
ここから本題ですが、予測はされているものの、いつ爆発するするかわからないこの星を、まだかまだかと夜通し空をながめているのは大変です。毎夜、観測はしていても短時間であれば見逃すこともあります。ATOM Cam2 (アトムカムツー) のような監視カメラを活用して、流れ星を捉えるために夜通し撮影するのが流行っていましたが、極大の明るさからこういった方法で爆発を捉えることもでき、それから観測に移る方法があります。ずぼらなようで、効率の良い観測方法かもしれません。
ここでは、公開されているライブカメラ画像の活用方法を紹介します。夜空を撮影しているライブカメラは多くあると思いますが、名古屋市科学館が提供している長野県の木曽観測所で撮影された「現在の空」の画像は、環境条件は最高で、10分毎に撮影されています。過去の画像もアーカイブで確認できます。
添付の画像は 2024年1月17日5時40分に NIKON D5600 Sigma 4.5mm F2.8 EX DC HSM Circular Fisheye で撮影されたものです。7等近くまで写っています。(画像は、オープンデータとして活用可となっており、名古屋市科学館の毛利様にも確認、承諾を得ています)

名古屋市科学館 木曽観測所「現在の空」から

かんむり座をトリミング

 

AAVSOサイトから作成した比較星 星図

 かんむり座は、眼視でも条件がよければ7個の星々が半円カップの形に並んでいるのがわかります。T星は、一番明るいα星の左三番目ε星の隣です。普段は10等で眼視では見えませんが、明るくなると、カップの底が二つの明るい星で輝くことになります。
光度が記載されたAAVSOのサイトから作成した比較星の星図をもとに 17日の3時から明け方の5時40分までの画像を確認しました。
全て、6.5等まで写っている画像にT星は写っていないため、17日の5時40分までは大幅な増光は無かったと言えます。30分毎にVSOLJの報告形式で記載すると、以下のようになります。
CRBT 202401162700 <65c
CRBT 202401162730 <65c
CRBT 202401162800 <65c
CRBT 202401162830 <65c
CRBT 202401162900 <65c
CRBT 202401162930 <65c
CRBT 202401162940 <65c

木曽の天候が悪い時は、国立天文台岡山観測所のライブカメラでもチェックできます。

 興味がある人は、もしε星の近くに今までなかった明るい星を画像から見つけたら、時間をおいて再確認するか眼視で確認して、確かなようなら速めに国立天文台・新天体通報へ報告してみましょう。できれば比較星図から光度を見積もってみましょう。一番明るいα星が2.2等、T星の隣のε星が4.2等なので、この中間ぐらいであれば3.2等ということになります。ひょっとすると、あなたが世界で最初に爆発を確認した人になるかもしれません。

 注目の星ですので、世界各地で、常時モニターする体制がとられていると想像していますが、ちょうど今の時期は、夜中にかんむり座が昇ってくるので、寝床の中でスマホによる木曽の画像をみながらまだかまだかと待っています。