反復新星さそり座Uが11年ぶりに爆発

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VSOLJニュースは転載自由ということで、1999年2月の爆発時に報じられたニュースの
一部を以下に。
今回の爆発は、1月27日16等以下であったが28日には8等まで急増光。
日本各地でも29日の朝には観測がされた。
写真は今朝30日。光度は9等台で暗くなっている。

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VSOLJニュース (012)  Date: Fri, 26 Feb 1999 19:29:09 +0900 (JST)

        反復新星さそり座Uが12年ぶりに爆発

著者 :加藤太一(京大理)
連絡先:tkato@kusastro.kyoto-u.ac.jp

 夜空に突如として輝き始める新星は、星の末期の大爆発である超新星とは異なり、
近接連星系中の白色矮星の表面に相手の星から積もったガスが爆発的に核燃焼する
現象と考えられています。爆発を起こした後も、相手の星からガスの流入が続けば
再び新星爆発を繰り返すと考えられています。しかし、理論計算によれば、典型的
な新星の場合、この反復の時間は数万年のオーダーとされており、同じ星が再度新
星爆発を起こすことを見届けるには気の遠くなるような時間がかかると考えられて
います。

 しかし、新星の中でもごくまれに、このような新星爆発を十年から数十年ごとに
繰り返す天体が知られています。これらの天体を反復新星(*1)と呼びますが、現在
までに銀河系の中にわずか7個しか発見されていません。

 今回再爆発を起こしたさそり座Uも反復新星のひとつです。この星の最初の爆発
1863年 5月20日、著明な変光星観測者であったポグソンが9.1等星で発見しました。
新星は急激に減光し、1週間後には12等星まで暗くなり、6月10日には13.3等星で
視界を去りました。わずか20日程度しか見えていなかったことになります。この爆
発はポグソン自身の記録しか残されていません。この星の2回目の爆発は1906年 5
月12日に起こりました。この爆発は当時精力的にパトロール写真を撮っていたハー
バード天文台の写真に記録されていたものが後の精査によって発見されたものです。
次の爆発は1936年 6月22日に起きましたが、この時もハーバード天文台の記録写真
から発見されました。1978年にウェビンクがパロマー写真星図との同定を行うまで
どの星が爆発したものかもわかっておらず、多くの天文学者にとって約30年ごとに
爆発する幻の星でしかありませんでした。

 この星が初めて近代的な観測手法による研究の対象となったのは、1978年の極小
での同定、そしてそれに引き続く1979年の劇的な再爆発以来のことです。この1979
年の爆発は 6月23日に日本の成見、桑野、オーストラリアのクラッグによって独立
に発見され、多くの望遠鏡が向けられました。この時も猛烈な速度で減光して、数
日のうちに小望遠鏡の視界を去りました。爆発が期待されていた平均周期30年より
もやや遅く起こったこともあり、20世紀中にこの星の再爆発が見られることはあま
り予測されていませんでした。

 その予想を覆したのが1987年の爆発です。さそり座Uは黄道面に近く、近くを月
が通過する時期は観測しにくいのですが、その困難も乗り越え、今世紀中の爆発の
可能性は低いと見られていたなかでも精力的にモニターを続けていた、南アフリカ
のオーバービークによって 5月16日に10.8等で発見されました。このわずか8年の
間隔の爆発は理論的にも新星反復間隔の最短に近いことや、発見時の光度が暗かっ
たことから完全にガスがたまらない状態で爆発したのではなかったのではないかな
ど、大きな波紋を投げかけました。さらに天文学者を驚かせたのは、爆発を終えて
静穏状態になっている時の詳しい測定によって、この星が周期約1.2日の食連星
あることが発見されたことです。この観測の結果連星の大きさや伴星のタイプが判
明し、さそり座Uは通常の新星に比べてこれだけ高い頻度で爆発をくり返しながら、
非常に遠方の天体らしいことが明らかになってきました。理論的には、このような
強烈な爆発を短い間隔で起こすためには、白色矮星の質量が理論的な上限値(チャ
ンドラセカール限界と呼ばれる太陽の約1.4倍の質量)に極めて近いことが必要と
されます。すなわち、もう少し白色矮星にガスがたまれば、白色矮星は自身の重力
を支えることができず、Ia型の超新星爆発を起こすことが期待されることになりま
す。この点から、さそり座Uは将来超新星爆発を起こすかも知れない有力候補とし
て非常に注目されるようになりました。////////