かんむり座T星の新星爆発　Cから摂氏（゜C）はまだ先か？　ペルチャ―氏から教訓

　このところ曇天が続いて星空の撮影ができていません。台風１号も発生しました。
最近、ニュースやSNSで「かんむり座T星、80年ぶりに新星爆発か」というような記事を多く見かけるようになりました。T星については昨年3月から何度かこのブログに書いていますが、先回の記事の一部をそのまま以下に転記します。
「さて、肝心の爆発はいつになるのかですが、先回1946年の爆発前の光度変化や色指数の変化などの類似から一番信頼性が高いのが、2024.4年±0.3 とする文献です。中央値はまさに今、4月後半です。もし、8月まで爆発しなければこの予想が外れることになります。今年になって、記録の無かった過去の爆発の中から、1217年と1787年については可能性が高い増光記録が確認されました。先ほどの観測からの物理的変化などを無視し、爆発周期の数字だけの遊びをすると、1217年～1946年の9回の爆発周期の平均は80.9年です。これを先回爆発の1946年にプラスすると、次回は、2026年12月になります。また、直近の3回の爆発周期平均は79.1年で、これでは2025年3月です。いずれも今年は爆発しないことになりますが、ただ、1年や2年は十分誤差範囲なので数年以内に爆発するのは確実です。かんむり座の「C」が「摂氏（゜C）」になっていないか見上げる日が続きます。」　と書きました。
そこで、雲間からでも、「かんむり座」が見えればチェックするように心がけていますが、「NS」が続きます。もう4月末を過ぎてしまい、なんとなく爆発は来年か、いや再来年か・・・なんて頭をよぎってきます。
しかし、実は紹介しておきたかったのは、彗星や変光星観測で有名なペルチャー氏の自伝記、『L.C.PELTIER 　STARLIGHT NIGHT』」です。『星の来る夜』（Starlight Nights ：鈴木圭子訳地人書館　1985年）の翻訳本があります。変光星観測者や新天体を探している人には必須の愛読書になっています。この書内にある編集部の解説に、「ペルチャーは12個の彗星を発見し、6個の新星を発見した。また、アメリカの変光星観測者協会（AAVSO）の重要メンバーとして活躍し、のべ10万個以上の変光星の観測記録を残している。彼の名は彗星によって世界中に知られているわけであるが、この地味な「変光星の観測」が、むしろ、よりたたえられるべき業績かもしれない。」とあり、この解説に感銘を受けて、30年も前の天文月報にも引用したことがあります。それこそ、今は写真撮影から自動観測ができますが、観測用星図の入手もままならない時代に望遠鏡を使っての眼視観測です。（参考：愛媛県の成見博秋さんは、「変光星の目視測光25万点」の功績により、第1回日本天文学会天文功労賞を受賞され、現在も更新されています）

　そのペルチャー氏が、この「かんむり座T星」について書いています。AAVSOには原文が引用されていますのでここでは翻訳を尊重して一部をそのまま転記します。23項・空からの訪問者　P246からです。
「古くからの新星の中でも、かんむり座T星はとりわけ若返りの魔法の薬草をがぶがぶ飲んでいるように思える。北天の高い位置にしていて、晴れた夜にならばいつかは見えるので、定期的な観測が容易にできる。1920年以来、機会あるごとに私はこの星を観察してきている。25年以上も、夜毎にこの星が気まぐれに寝返りをうつのを私は見守っていたのだが、1946年2月のある夜、T星は突然目を醒まし、ゆっくり目を開けると、やにわにソファのおおいをはねのけて起き上がったのだ！・・・・からまるまる80年を経ていた。そして、自らT星の後見人を名乗り出ていた私が、一生に一度めぐりあえるT星の目醒の夜、どこにいたか？なんと眠っていたのである。・・・・こうして私はかんむり座T星の一生の中でいく度とはない夜を見逃してしまったのである。・・・役目を怠った責めはひとえに自分にあるのだが、それでも、T星はもう少し配慮してくれても良かったのではないかと私は思う。私たちは長年の友人である。T星が眠っている間、何千夜も私は彼を見てきた。そして私が弱っていてちょっと油断をしている間に、T星は目を醒ましてしまったのである。今でも観測を続けているが、疑いの目で見ている。私たちの仲はさめてしまった。・・・」

　これを読み返しながら、爆発は来年や再来年でない、今日だ！と思って夜空を見上げたいと思います。が、今夜は、星来るではなく、雨降る夜になりそうです。